自己分析・企業研究

医療機器業界に転職したい人のための企業の探し方

医療機器業界に狙いを済ます子供

私は転職エージェントで医療機器業界を担当していたことがありました。その経験から、医療機器業界への転職に興味がある方に向けて業界を見る切り口をいくつかご紹介します。

お金を稼ぎたい人は外資の循環器メーカーを狙え!

医療機器業界は年収レンジが比較的高い業界として知られていますが、実際はその中でもかなりばらつきがあります。

もし高い年収を求めて医療機器業界への転職を目指すのであれば循環器領域の商品を扱う外資系メーカーがベストな選択肢です。

医療機器業界は命へのリスクが高い製品を扱っている企業ほど年収が高くなり、循環器領域はその最高峰だからです。

また、日系よりも外資の方が年収が高く、卸や商社よりメーカーの方がそれぞれ年収が高いため、外資系循環器メーカーは業界最高峰の給与水準を誇るのです。

企業名を挙げるとメドトロニック、ボストンサイエンティフィック、アボットバスキュラーあたりが大手であり、営業であれば30歳で1000万円を目指せます。

診療領域で分けてみる

循環器

循環器領域は医療機器の中で花形と見る人もいるほど中心をなす領域です。

人命に直結する分野であり、そこにやりがいを感じやすい反面、企業間での競争が激しい領域でもあります。

緊急性の高い製品であることと競争が激しいことからハードワークが求められるため、ワークライフバランスの改善を希望してこの領域から他の領域への転職を希望する人がいます。

血管内治療を行うために使われるステントやバルーンカテーテル、心臓の働きを助けてくれる人工弁やペースメーカーといった製品がこの領域に該当します。

日系メーカーだとテルモが有名ですが、外資がかなり強い領域であり、ボストンサイエンティフィック、メドトロニックといった超大手クラスの企業は幅広くこの領域で製品を展開しています。

新製品が出たら一気にシェアがひっくり返る領域でもあるため、劣勢になった企業から新製品を出したメーカーへ転職していく人が多くいます。

ビジネス的な視点で見ると、人命に関わる分製品の付加価値も高く利益を出しやすい特徴があります。

整形

整形外科領域の医療機器として代表的なのが人工関節です。

循環器と同じく外資が圧倒的に強く、ストライカーやジンマーバイオメットが高いシェアを誇ります。

給与水準は循環器領域に次ぐ高さを誇ります。営業マンは手術に立ち会うこともありますが、手術が長時間に及ぶこともあるため体力が必要な領域でもあります。

歯科

歯科領域は製品群がかなり幅広くありますが、代表的なもので言えば歯科用のCT、歯科インプラント(人口の歯)、ハンドピース(歯を削るに使うドリル)あたりでしょうか。

日系メーカーだとGCが最大手ですが、世界的に見るとデンツプライが高いシェアを誇ります。

インプラントに限定すればストローマン、ノーベルバイオケアが強いなど、製品群ごとに主要なプレイヤーは大きく変わってきます。

年収レンジが他の領域に比べると低め。

歯科領域にいる人は、開発や品質管理体制などの面で全体的に他の領域よりも遅れているとの理由で他の領域に転職を目指すことがあります。

また、企業から見ても医科と歯科とを分けて考えるため、歯科領域から医科領域への転職は難易度が高い傾向があります。

眼科

白内障・緑内障治療のためのレーザーや眼内レンズといった製品群がこの領域に該当します。

企業としてはエイエムオー、HOYA、トプコン、カールツァイスあたりが有名です。

薬事のクラスが高い製品も多く、循環器や整形に比べると劣るものの年収も比較的高めで、大体年収レンジは中の上〜上の下くらいのイメージです。

診断機器と治療機器とで分けてみる

診断に使われる医療機器

病気を早期に発見することは治療の可能性を高める上で極めて重要なことであり、適切に診断するための医療機器は医療に欠かすことができません。

CTやMRIなどが代表的で、メーカーとしてはGE、シーメンス、フィリップスといった外資系、日系だと日立やキヤノンあたりが有名です。

CTやMRIはかなり大型の装置で値段も高いので今日営業をかけて明日売れるようなものではありません。

何年もかけてアプローチを続けて今使っているものの買い替え時期に合わせて買ってもらうことになります。

治療に使われる医療機器

領域のパートで紹介した医療機器はほぼ治療機器に該当します。治療機器は診断機器に比べると患者の人体に負担がかかることが多いので、できるだけ体への負担の少ない医療機器を開発していく方向にあります。

例えば昔であればお腹を切り開いて手術していたのが、技術の進歩により小さな穴を開けるだけで良くなったりしています。

治療行為は命へのリスクもあるため、営業マンはドクターが安全に使用できるかどうか慎重なフォローが求められます。

薬機法でのクラス分類で分けてみる

医療機器は薬機法という法律によって規制されていますが、人体へのリスクに応じてそれぞれクラス分類がなされており、クラスⅣが最も高くクラスⅠが最も低い医療機器となります。

例えば手術で使うメスはクラスⅠ、人工関節はクラスⅢ、ペースメーカーはクラスⅣのようなイメージです。

医療機器を開発しても、販売するためにはPMDAという機関に申請を出して許可を得る必要があるのですが、その許可を取る難易度はクラスが上がるほど高くなります。

難易度が高いということはその分参入障壁が高くなることを意味しますので、異業界からいきなりクラスⅣの医療機器を作ろうと思ってもまず無理です。

このあと取り上げる職種によってはどのクラスを経験しているかで他のクラスへの転職に制限がかかることがありますので注意が必要です。

働き方でいうとクラスが高い製品に関わるほどハードワーク、給与面ではクラスが高いほど高年収になります。

職種によるものの、上のクラスから下への転職はしやすいですが、その逆は難易度が上がります。

職種で分けてみる

営業

医療機器業界の営業は車が必須です。病院を回ったり、ディーラー(卸)を回ったりします。

基本的にお医者さんに販売するのはディーラーの仕事なので、メーカーの営業マンの仕事はドクターに医療機器の使い方を説明したり、ディーラーに販促面での協力を取り付けたりすることになります。

また、手術に使われるものであれば実際に手術に立ち会い、適切な方法で使われているかを見ることも仕事に含まれます。

手術室は気温が低く抑えられており、その中で何時間も立ちっぱなしでいる辛さや、血を見るのが苦手との理由で転職を考える人がいます。

クリニカルスペシャリスト

クリニカルスペシャリストはユーザーサポートのような仕事でしょうか。営業のように販売目標は持ちませんが、病院に行って製品の説明会をしたりして営業をサポートするのが仕事です。

看護師経験者が求められることが多く、給料も上がるのでキャリアチェンジ先として人気の職種です。

薬事申請

先ほどクラス分類の話をしましたが、最もクラスの違いによる影響を受ける職種がこの薬事申請でしょう。

仕事内容を簡単にいうと、国から医療機器の販売許可をもらうことです。

クラスが高くなるほど国から要求される項目も広く深くなっていくため、理系で専攻が合っている方でないと就職・転職できないケースも多いです。

例えば人工関節の薬事申請であれば素材・材料系のバックグラウンドが求められ、ペースメーカーであれば電気的な専門性が求められることになります。クラスがⅠ〜Ⅱであれば文系の方でも任されることがないわけではありません。

また、外資だとありませんが、日系企業だと海外薬事と呼ばれるポジションも出てきます。

これは海外で医療機器を販売する許可をもらうことです。

アメリカだとFDA、中国だとCFDAと呼ばれる機関から許しをもらう必要があるため、国を超えたやりとりが発生します。

クラスが低い製品を扱っている薬事の方はやりがいを求めてもっとクラスを上げたい、という理由で転職を考えることがあります。

反面、クラスが高い製品を扱っている方は忙しすぎるため転職したいと相談に来るケースがあります。

日系企業の国内薬事だけなら英語は不要ですが、外資での薬事や日系企業での海外薬事を希望する場合には英語力が必須になります。

フィールドサービス

主に機械・装置系の医療機器を扱う企業で募集されるポジションです。

医療機器の保守・点検・修理を担う仕事であり、壊れたから修理に来てくれ!といった病院からの依頼を受けて直しに行きます。

売り上げ目標を持たされるケースもあります。

機械系のバックグラウンドが求められることが多いことから、慢性的に人手不足なポジションであり忙しく飛び回るフットワークの軽さとタフさが求められます。

プロダクトマネージャー

通称プロマネと呼ばれるプロダクトマネージャーは担当する製品の売上目標を達成するための戦略を立てて実行するポジションです。

日系企業ではあまりこうしたポジションがなく、ほぼ外資からしか出てこないこともあり、高い英語力が求められます。

医療機器業界でマーケティングといえばプロマネを指すことが多い印象ですが、異業界のマーケティング経験者よりは、高い営業実績を残して英語力もある営業マンが社内異動で就くことが多いです。

年収レンジも高く花形的なポジションに見られることがあります。

マーケティングコミュニケーション(マーコム)

展示会出展や販促資料の作成を担う仕事です。

医療機器の展示会に足を運んでみると企業によって力の入れ具合に大きな差がついているのが分かる通り、企業によって使える予算に大きな違いがあるため、それが仕事のやりがいに影響するケースが出てきます。

日系と外資とで分けてみる

日系の医療機器メーカーで言えばオリンパス、日本光電、テルモ、ニプロ、フクダ電子あたりが大手です。

日系メーカーの特徴としては安定して長く働ける環境があるところや、海外市場にも関われるチャンスがあるところです。

営業の方であれば海外営業や海外拠点長として活躍するチャンスが得られるかもしれませんし、開発の方であれば海外市場向けの製品開発に携われるかもしれません。

外資の場合、日本法人で働く以上ミッションは日本市場を伸ばすことなので、他の国で働く機会や、他の国に向けた製品開発などに関わる機会はまずありません(ものすごく出世してアジア全体を統括するような立場になれば別ですが)。

日系企業にとっては事業の伸びしろは日本よりも海外の方が大きいため、海外で売り上げを伸ばしていくことが今後の重要な成長戦略になりますので、必然的に海外事業に関われるチャンスは増えます。

ただし、中小企業になるとまだ海外へは輸出しかしておらず拠点を持っていないことが多いため、海外勤務のチャンスが多いとは言えません。

海外に向けた営業も満足に出来ておらず、HPからの問い合わせに対応している程度という企業がまだまだ多いため、海外営業専任者はおかずに貿易実務を担当している人材が主に海外営業的な仕事を担うことになります。

日系の医療機器メーカーはよく言えば温かく、悪く言えばぬるいと言われることが多く、そうした環境で働きたい方には日系をお勧めします。

外資の場合には本国や地域統括拠点からの強いプレッシャーを受けながらの事業運営になるため、ハードワークになりがちです。

ただし、年収はその分日系に比べると高い傾向があります。

先ほど職種分類で紹介した薬事を例に挙げると、クラスⅣを担当する30歳のスタッフクラスの年収で比較した場合、日系であれば年収600万円程度ですが、外資なら800万円程度もらえます。

また、海外勤務のチャンスもないわけではありません。

営業系の人材で海外に行けることはあまりありませんが、開発系の人材で英語が堪能な方であれば本国に逆出向できるチャンスはあります。

あるいはマーケティングの方であれば日本だけでなくアジア全体を統括する立場にまで出世すれば、香港やシンガポールあたりでの勤務となる可能性もあります。

ビジネスモデルで分けてみる

メーカー

医療機器を自社で開発、設計、製造、販売をしています。

上でご紹介した会社は全てメーカーです。

他の業態と比べても最も人気が高く、キャリアの広がりや給与面なども充実しています。

商社

海外の有望な医療機器を見つけて国内で売るのが主な事業内容です。

国内の大手だと伊藤忠系列のセンチュリーメディカルなどがあります。

卸と同じく自社製品は持ちませんが、海外メーカーに代わり日本国内での流通に責任を負う立場となるため、薬事、安全管理、品質保証もしないといけないなど、メーカーと比較的近い立場で事業を行うことになります。

ディーラー(卸)

メーカーや商社が扱う数多くの医療機器の販売を行います。

メーカーや商社の営業に比べると幅広い製品を扱うのが特徴であり、そうした広い製品から合ったものを病院に提案できる点はやりがいとなる反面、専門性が身に付かないとの理由から転職を考える人が多いのが特徴です。

ディーラーからメーカーへの転職を希望するケースが見られる反面、メーカーからディーラーへの転職を希望するケースはあまり見られません。

CSO

簡単にいうと営業マンの派遣をするビジネスです。

主に製薬業界向けのMR派遣がメインですが、たまに医療機器メーカー向けに派遣するプロジェクトも発生します。

入社後の研修が手厚いのが特徴で、プロジェクト終了後にはメーカー側に転籍となることもあり、メーカーへの転職を希望する方がCSOに一旦入るケースがあります。

ネックとしてはプロジェクト受注が安定しないことです。

先ほどお伝えした通り、CSOは主にMRをメインで派遣しているため、医薬品メーカーからの案件が主となります。MRには資格が必要なため、資格を持っていない限りは医薬品メーカーのPJにアサインされることはありません。

薬事コンサル

薬事申請をサポートするビジネスです。

年収レンジはメーカーの薬事申請担当者の方が高い傾向がありますが、メーカーと違ってより沢山の製品に関われることが魅力です。

メーカーだと新製品開発が一向に進まない場合や、メーカーの製品群によってはクラスの低い製品しか扱えないなど、薬事としての専門性を高められないとの不満から薬事コンサルに転職するケースがあります。