転職活動を始めたいけど、ハローワークと転職エージェントって何が違うの?どっちを使えば良いの?
こんな疑問にお答えしていきます。
ハローワークと転職エージェントはどちらも同じく求人を紹介してくれるサービスを提供していますが、運営母体が国なのか民間なのかという違いがあります。
メリットの比較として、求人量ではハローワークが優れ、求人の質や求人に関する情報量では転職エージェントが優れています。
転職エージェントで10年ほど勤務した経験をもとに、両者の違いやどちらを使うべきかについて解説していきます。
関連記事:ハローワークに転職相談するってどうなの?メリットとデメリットを解説
ハローワークと転職エージェントの違い
ハローワーク(公共職業安定所)と転職エージェント(人材紹介会社)はどちらも求職者に求人を紹介してくれる点では同じです。
以下の表をもとに説明していきますね。
運営母体 | 利用者層 | 費用 | 求人数 | 支援実績 | 求人の質 | 情報量 | 定着率 | |
転職エージェント | 民間企業 | 若い | 無料 | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
ハローワーク | 国 | シニア | 無料 | ◎ | ◎ | △ | △ | △ |
運営母体の違い
ハローワークは国が運営しているのに対し、転職エージェントは民間企業が運営しています。
運営母体の違いは拠点やサービス内容にも大きく違いをもたらしています。
ハローワークの方は国の事業だけあって全国至る所に拠点を作っていますがエージェントの方は主要都市にしか拠点を出していないことが多く、拠点がないエリアから登録した場合には電話やZOOMなどでサービスを受けることになります。
また、サービスの提供時間帯にも違いがあり、ハローワークの方は大体17時くらいにサービスを終了する拠点が多いですが、転職エージェントの場合には夜でも対応してくれるところがあります。
転職エージェントは民間に運営されていることから信用度に疑問を感じる人もいますが、大手はプライバシーマークを取得しており個人情報を保護するための厳しい審査をクリアしているところがほとんどなので実際には個人情報が漏洩するようなリスクは極めて低いです。
利用者層の違い
ハローワークと転職エージェントとでは利用している層が異なり、参考までに学歴と年齢の観点からユーザー層の違いについてご紹介します。
学歴の違い
利用者を学歴で比較してみると、転職エージェントの方がハローワークに比べて大卒や院卒といった高学歴な人の利用割合が高くなっています。
これは扱っている求人の質がハローワークと転職エージェントとで大きく異なっており、高学歴な人が興味を持ちそうな上場企業など人気企業の求人や条件の良い求人が転職エージェントに多く集まっていることが要因として考えられます。
でも学歴に違いがあるなんていうと「じゃあ自分には使えないんじゃ?」と不安になる方もいるかもしれませんが、実際にはエージェント毎に対象ユーザーが違うので自分に合うところを見つければOKです。
⇨関連記事:転職エージェントに登録拒否される?実態と対処法を解説します

年齢層の違い
続いて年齢層での比較です。
転職エージェントを利用している層は20代〜30代と比較的若い人が多く、ハローワークでは40代以降の層が多くなっています。
年齢層に違いが出ている理由としては、転職エージェントという存在がここ10年ほどで急速に伸びてきているサービスであるため50代や60代の人にはあまり浸透していないことも要因かもしれません。

費用の違い
費用についてはハローワークも転職エージェントも両方無料で使えるので違いはありません。
あえてお金がかかるケースを挙げてみるとハローワークに登録するため直接施設を訪問する場合にその分の交通費がかかるくらいです。
転職エージェントの方は面談も求人紹介も全て電話やメール、zoomなど非対面で完結させることができますので交通費すらかからないことが多いです。
転職エージェントは民間が運営しているのになんで無料なの?と思うかもしれませんが、転職エージェントは個人ではなく採用した企業から成功報酬で料金をもらうビジネスモデルなので無料で使えるんです。
※関連記事:転職エージェントはなぜ有料じゃないのかビジネスの仕組みを解説
求人数の違い
求人数についてはハローワークが圧勝しています。
厚生労働省が公表しているデータによるとハローワークの新規求人数は790.6万件(令和2年実績)。
一方の転職エージェントはというと、最大手のリクルートエージェントであっても常時取り扱い求人数は10万件程度なのでその差は圧倒的ですね。
※関連記事:【体験談】リクルートエージェントの感想を良かった所と悪かったところに分けて解説します
ただ、ハローワークの方も常時募集している求人数で比較するとするなら790万件より大幅に少なくなると思います。(求人の大半は数ヶ月で募集を終了するので。)

ただ、エージェント一社ごとの保有求人数こそハローワークに及ばないものの、それぞれの会社が異なる求人を扱っているので複数のエージェントに登録することで出会える求人数も増やせるという特徴があります。
リクルートエージェントのサイトによると転職経験者の70%以上が複数の転職エージェントに登録しているとのこと。
つまりより良い求人と出会うために複数のエージェントを使うのはスタンダードなやり方だということが分かります。
※関連記事:転職エージェントは何社に登録すべき?複数登録するメリットとデメリット
年間の支援実績
ハローワーク経由で転職した人数はおよそ74万人で転職エージェント経由の35万人を上回っています。

現時点ではまだハローワークの方が転職支援実績が多い状況ですが、近い将来エージェント経由の方が多くなる可能性もあります。
転職エージェント経由の転職人数は平成12年度で年間5万人程度だったので20年で7倍に増加している一方、ハローワークは平成29年度の109万人から、平成30年に102万人、令和元年に92万人と減少してきています。
求人の質の違い
ハローワークと転職エージェントでは求人の質が大きく異なります。
具体的にいうと転職エージェントの方が年収が高い求人が多く、上場企業や有名企業の求人も豊富です。
扱っている求人総数はハローワークの方が多いものの、ハローワークの場合には地域の零細企業からの求人がほとんどなのでそれほど条件の良い求人が揃っているわけではありません。
例えばハローワークで年収1000万円以上が見込める求人はほぼ存在しませんが、転職エージェントでは珍しくありません。

事実、私も転職エージェントで働いていた頃に1000万円以上の求人は数多く扱っており、時には2000万円前後の年収で内定が出たこともあります。
エージェントの扱う求人は人気がある分、誰でも自由に応募できるわけではありません。
エージェントと面談をした上で、応募要件を満たしていると判断された求人を紹介してもられます。
⇨関連記事:転職エージェントから求人が紹介されない原因と対策
情報量の違い
興味のある業界や企業について情報収集しようとする際、ハローワークよりも転職エージェントの方が豊富に情報を持っています。
配属部署の人数や役割分担はどうなっているか?離職率は高いか?残業時間は求人票の記載と開きがないか?などなど気になることは山ほどあるはずですが、それらの疑問がハローワーク経由の場合に入社前に解消されることはあまりありません。

ハローワークの場合には求人票に記載されている内容が全てなので、求人票に書かれていないことは面接の場で質問するしかありません。
しかし、実際には面接の場で「残業って多いですか?」などと質問してしまうのは面接官に与える印象もよくないので避けたいところ。
転職エージェントでは業界ごとの求人トレンドから企業ごとの内部情報まで把握しているので応募するかどうかの判断材料が得やすいです。
⇨関連記事:転職活動で業界研究を最速で終わらせる方法を解説
選考対策の充実度の違い
書類選考や面接の対策に対するサポートの充実度はハローワークより転職エージェントの方が良いです。
ハローワークでも初歩的な選考対策のサポートは受けることができます。
しかし、本当に重要なのは「応募した企業に合った」対策をすることです。

企業によって書類選考でチェックするポイントや面接で質問する内容は異なりますので、本当に対策したいのではれば「この企業ではここに気をつけて職歴書を作ってください」とか「この企業では面接でこんな質問をされるので準備しておいてください」といった具体的なアドバイスを受けられる方が選考通過率は高くなります。
転職エージェントは日頃から企業の採用担当者と話したり面接に同席したりしているので持っている情報量が違います。
⇨関連記事:リクルートエージェントで模擬面接をやってもらって学んだこと
定着率(離職率)の違い
ハローワーク経由で転職した場合と転職エージェント経由で転職する場合とでは入社後の定着率が違います。
ハローワークの実績値として入社してから半年以内に離職する人が全体の20%前後おり、これはエージェント経由と比較すると桁違いに高い数値となっています。

ちなみにエージェント経由の実績は公開されていませんが、私のいたエージェントで大体3%くらいです。
どんなエージェントでもこれが20%まで高くなることはなく、ほとんどが10%未満の数値に収まるはずなのでハローワーク経由の転職がいかに定着が難しいかがわかると思います。
⇨関連記事:試用期間での退職は転職に不利?【合格率を高める方法】
ハローワークを利用すべき人
ハローワークの特徴としては、全国の中小企業の求人を扱っている点と、相談窓口が全国各地にある点が挙げられます。
以下の条件に当てはまる人はハローワークを使ってみても良いかもしれません。
・地方で働きたい
・地方に住んでおり、転職の相談は対面で行いたい
・大企業よりも家族経営的な小さな企業で働きたい
・学歴やスキルに全く自信がない
転職エージェントの場合には地方の企業までは求人を取りに行っていないことが多いので求人をあまり持っていません。
一方、ハローワークであれば全国の企業から求人が寄せられるので求人が豊富です。
また、ハローワークは全国544所に拠点を持っており、地方でも相談をすることができます。
転職エージェントの場合には東京や大阪など主要都市にしかオフィスを持っておらず、地方の場合には電話やZOOMを使った面談になってしまいます。
なので地方にいながら対面で相談したい人にとっては、ハローワークの方がオススメです。
また、有名企業や大企業ではなく、町工場のような小さな会社で働きたい場合にもハローワークがオススメ。
こちらも転職エージェントでは扱っていない求人です。
最後に学歴とスキル。
ハローワークの場合には誰でも利用できますが、転職エージェントの場合にはある程度学歴や職歴を選ぶ求人が多く集まっています。
転職エージェントを利用すべき人
転職エージェントを使った方が良いのは以下のような条件に当てはまる場合です。
・都市部で働きたい
・大手や有名企業で働きたい
・求人の内容について詳しく知りたい
・書類の書き方や面接対策をしっかりやってほしい
転職エージェントには都市部の求人が多く集まっており、その中には大手企業や有名企業の求人も多数含まれています。
基本的に大手企業はハローワークではなくエージェントを使う傾向があるので、大手に行きたい人はエージェントを使うようにしましょう。
大企業がハローワークを使わない理由の一つが選考の手間。ハローワークに人気企業が求人を出してしまうと採用ターゲットから大きく外れた人が大量に応募してくるので選考の手間が膨大にかかる。
また、転職エージェントの場合には実際に企業に足を運んで求人や会社についていろいろな情報を聞いてきていますので、情報量も豊富です。
どんな人が欲しいのか、どんな社員がいるのか、その会社の強みは何かなど、求人票に書かれていない内容も含めて教えてくれます。
まず転職エージェントから使うのがオススメ
転職エージェントとハローワークは別に併用しても構いません。
離職中の人の場合、離職期間が長引くと転職活動に不利になるので、併用した方が良いでしょう。
一方、まだ仕事を続けているという方であればまず転職エージェントを使うべきです。
理由は求人の質。
これは私がこれまで1000社以上の会社と採用についての相談に乗ってきた経験から言えば、転職エージェントではなくハローワークに求人を載せている企業はキャリアアップを目指す人には相応しくありません。
ハローワークを使う企業は経営状況が良くなかったり、給料が安い、福利厚生が充実していないなど、転職を考える人にとって魅力的なところが少ない傾向にあるのです。
当然、用意されている仕事内容についても比較的誰にでもできる仕事であることが多く、スキルが身につきません。
ハローワークは企業が無料で使えることもあり、あまり質の高い求人が揃っていないのです。
まずは転職エージェントを使って優良求人を探し、それで良い求人がない場合にハローワークを使うという順番がチャンスを最大化するコツです。
ただ、転職エージェントは数多くあり、それぞれ持っている求人が異なります。
複数のエージェントに登録しておかなければ優良求人を取りこぼすリスクが高くなるので、大体3〜4社くらいには登録しておくことをお勧めします。
まとめ
転職は一生を左右する重要な選択です。
個人的にはハローワークは最終手段としてとっておき、まずは転職エージェントから優良求人を探すことをお勧めします。
とはいえ、悪徳エージェントに引っかからないためには、個人のエージェントよりも大手のエージェントを使うのが良いでしょう。
信頼できるエージェントの特徴は以下の通り。
・プライバシーマークを取得している(個人情報の取り扱いについて一定の基準を満たしており、勝手に応募手続きを取られたりする危険がない)
・求人数が5000件以上(少数のクライアントしか持っていないエージェントはその企業に転職させようと強引な勧誘になりがち)
・転職初心者向けのマニュアルやノウハウが充実している
もしまだ転職エージェントを使ったことがないという人にはリクルートエージェントがオススメです。
業界最大手なのでマニュアルも充実している他、取り扱い求人数も10万件以上ありダントツトップ。
より多くの選択肢の中から求人・キャリアを選ぶことができます。
・雇用統計:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450073&tstat=000001012468&cycle=0&tclass1=000001012478
・リクルートエージェント:https://www.r-agent.com/service/data/
・doda:https://www.saiyo-doda.jp/report/7906
・独立行政法人労働政策研究・研修機構:https://www.jil.go.jp/institute/research/2008/documents/039/039_02.pdf
・公共職業安定所(ハローワーク)の 主な取組と実績:https://www.mhlw.go.jp/content/000735217.pdf