私は現在SaaSのプロマネ(PdM)として働いていますが以前は人材会社で事業企画として働いていた時期がありました。
ここでは事業企画を経験してみて感じたやりがいや大変さについてご紹介していきますので事業企画へのキャリアチェンジなどを考えている方の参考になれば幸いです。
なお、事業企画というポジションは会社によってカバーする業務範囲や内容が多少違うため、あくまでも私が経験した内容をもとにしている点ご了承ください。
やりがい
まずは事業企画として働く中でやりがいに感じた部分についてご紹介していきます。
事業への影響度がかなり大きい
一番やりがいに感じるのは事業への影響度が大きいことでした。
私はもともと営業からキャリアをスタートしてますが、一人の営業として事業に与える影響度ってあまり感じられなかったんですよね。
会社全体で見ればたくさんいる営業の一人でしかなく、自分一人が作れる売り上げなんてたかが知れていたからです。
一方、事業企画は事業全体をどう伸ばすかについて考えるポジションであり、自分の仕事次第で会社の成長曲線が大きく変わる可能性があります。
なので自分が頑張れば会社全体としての成長を実現させることもできます。
そうした影響度の大きさは働いていて魅力に感じていました。
大きな投資が必要な施策も提案可能
事業企画の仕事は大きな投資案件にも関わることが可能です。
例えば私が事業企画をしてた頃はSFAの導入を進めており、会社が支払うコストとしては過去最大規模の投資案件でした。
自分が営業だった頃を思えば会社のお金で何かをするというのは基本的になく、お客さんとご飯に行くお金の補助が出る程度。
また、私は営業企画も経験してますが営業企画も使えるお金としては事業企画よりも桁が一つ二つ少なかったので事業企画の裁量の大きさはやりがいに感じられましたね。
会社がやろうとしていることをいち早く知れる
事業企画というポジションは会社がやろうとしていることをいち早く知れる立ち位置でもあります。
役員だけでこっそりと検討を進める案件の場合でも事業企画の立場でそうした会議に参加し、役員の手足となって検討を進めるサポートを行います。
例えば他社との業務提携を進める案件だったり、新しいマーケットを攻略するための新組織の立ち上げや新事業の構想だったり。
営業現場にいた頃は会社が既に全て意思決定した後に結果だけ降りてくるだけでしたが、事業企画はまさに会社として大きな意思決定しようとしている様を目の当たりにすることができ、何ならその意思決定を左右するポジションだったりします。
常に新しい業務に挑戦できる
事業企画はあまりルーティーンの業務がなく、常に新しい&大きな案件に関わっていられる点も面白かったですね。
私は単純作業の繰り返しが苦手で常に新しいチャレンジをしていたいタイプだったので常にこれまでの経験だけではこなせないような案件に従事できるのは良い経験となりました。
事業企画として働いた期間は1年ほどでそれほど長くありませんでしたが、その中で関わった案件だけでも「SFA導入」「営業組織立ち上げ」「新規事業の事業計画づくり」「市場調査(セグメントごとの市場規模推定と競合シェア推定)」「事業全体の10年計画づくり」「外部企業との業務提携」「子会社との協業推進」「BI導入によるモニタリング基盤構築」など、多くの仕事を経験させてもらいました。
苦労
続いて事業企画の苦労についてご紹介します。
社内調整が面倒
事業企画は社内調整の連続でありそれは正直いって面倒です。
特に関わる人が社内の役員クラス中心なので、会議を設定しようにも予定が合わなかったりしますし、案件ごとに役員同士のお互いの思惑がぶつかり合ったりするので会議よりも前に根回しというか事前の意見調整をしないといけなかったりします。
案件の取りまとめを事業企画の立場で行う以上、そうした役員間の意見のずれを調整する仕事もまた事業企画の仕事であり、重要なこととは思いつつもかなり嫌な作業ではありました。
会社の闇を見る
会社に深く関わるポジションだからこそそれまで見えていなかったネガティブな面も見えることがあります。
私の場合にも会社としての意思決定の不合理さや役員間の不毛な争いを目の当たりにしてげんなりした記憶があります。
正直それが転職するきっかけの一つにもなりました。
例えば会社としてとある顧客セグメントを取りに行くべきか否かを社長命令で調査することとなったのですが、企業に聞いても営業に聞いても外部の調査データを見てもそのセグメントは過去に比べると遥かに市場規模が小さくなっており、また自社の強みが活かせる領域でもなかったため参入すべきではない状況だったのですが、社長は過去の印象が強いため「市場はあるしやれば勝てるはず」と突っぱねられました。
初めからやるっていう結論ありきなんだと思いましたし、結論が決まってるのなら市場調査に割いた時間を返してほしいなと思ってました。
また別の例をあげると、社長ととある役員とで結論を出してもらうべき案件があり、その両者を入れてミーティングをセットしたのですが社長がその役員との会話を嫌がりミーティングをキャンセルしたため結局その案件について結論を出せなくなり検討がストップしたこともあります。
自分的には理不尽だと感じることが割とあるのでストレスのかかる仕事ではありましたね。
成果が出るまでに時間がかかることが多い
事業企画の仕事は企画から実行、そして成果が出るまでに時間がかかってしまう点は自分の仕事の成果が見えづらくしんどい部分かも知れません。
営業企画時代には営業現場との擦り合わせのもとで数日もあれば企画から実行までやれてしまうことも多かったですが、事業企画として関わる案件は早くても1ヶ月、基本的に数ヶ月〜1年など長期間かかるものが多かったです。
実行できてもその効果が出るのはさらに半年から1年かかるなど、なかなか自分の仕事の成果が見えません。
なぜ各案件にそんなに時間がかかるのかというとそれぞれの案件が会社に与える影響が大きく、意思決定や作業を慎重に進める必要があるためです。
例えばSFAを入れるプロジェクトを考えてみると、SFAは入れるだけで終わりなわけではなく使い続ける限りランニングコストがかかりますし、基本的には従量課金なので従業員が増えるほどあるいは投入する情報量が増えるほど費用は増えていきます。
なのでSFAを入れるということは長期的にみると会社のお財布的にかなりの負担を強いることになるわけですね。
となると当然入れたはいいけど元が取れませんでした、だと笑えないので入れる前からしっかりとどんな要件で入れればいつまでにどんな効果が出そうなのか、を精緻に見立てていく必要があります。
また、実際にSFAを使うのは現場の人だったりするので現場の人からも話を聞いて今困っていること、それを解消するために必要な条件などを把握してSFAの要件として吸収していく必要があります。
かといって現場の全ての要望を聞いていたら導入コストがどんどん増えていくため全ての要望を叶えることはできません。
優先順位をつけて、この要望は反映させないという意思決定も必要です。
こうした作業を丁寧にやろうと思うとどうしても時間がかかりますよね。
また、実際にSFAを入れたとしても効果を実感できるようになるまでにはさらに半年など時間が必要になります。
このように事業企画という仕事は大きな案件に関われる分だけ仕事の進みが遅いため、早く成果を実感したいという人にはもどかしい部分があると思います。
現場から遠くて何をやってる人か認知されなくなる
私のキャリアは営業からスタートし、その後営業企画へ異動し、営業企画から事業企画へと異動をしています。
異動するごとに現場から遠くなっていき、現場と関わる機会が減っていくので仲の良かった営業の人たちと話をしていても自分が何をやってる人なのかが全然認知されなくなってきます。
営業からすれば自分達が売上を作っている自負がありますし、事業企画の人とは直接関わることがないので何をやっているのか分かりづらい部分もあるでしょう。
なので営業の人と話していると自分が本当に役に立てているのか自信が持てなくなることもあったりします。
何をやっているのか知られていない=自分が何もやっていない、みたいな感覚になるのです。
当然実際はそんなことはないのですが現場から何をしているのか理解してもらえないのは元々現場にいた人間からすると寂しい思いがしました。
話せないことが多い
何をやっている人なのか現場に知られていない理由にもなるのですが、事業企画は会社として内密な案件に関わることが多いため他の従業員に話せないことも多くなります。
特に上場会社だと株価に影響するような大きな案件もあるため口が軽い人だと務まらないでしょう。
仲の良い同僚と話をしていても自分が具体的にどんな仕事をしているのか話せないというのは辛いものがあります。
まとめ
事業企画という仕事は経験してみるとそれなりにストレスの多い仕事でしたが、それでも私は経験して良かったと思ってます。
会社の重要な意思決定に関われる醍醐味は他の仕事ではなかなか味わえないものですし、事業企画を経験したことで事業全体としてどう伸ばせる余地があるかを考える力はかなりついた実感があるので自分の成長という意味でも意義のある経験でした。
もし事業企画に興味がある人がいたらぜひ挑戦してみてください。