最近流行のジョブ型雇用。
元々海外では一般的な雇用形態ではあるものの、日本においてはメンバーシップ型と呼ばれる雇用が一般的でした。
それが最近になって欧米流のジョブ型雇用が日系企業でも取り入れるところが出てきています。
今回はそんなジョブ型の会社で働くメリットとデメリットについて解説していきます。
ジョブ型とはどんな雇用形態か
ジョブ型雇用とは、一言で言えば仕事に人材が紐づく形で雇用される形態のこと。
例えば、営業という仕事をするポジションが先にあり、そのポジションを担うAさんとかBさんといった人がその仕事をするために採用されるという形です。
それだけ聞くと「普通じゃない?」という感じですが、日系企業の場合にはこれまで仕事と人材の関係性が逆でした。
具体的に言えば、先にAさんやBさんという社員がいて、その人たちにどんな仕事を任せようか?という議論が次にくるイメージです。
なのでジョブローテーションのような形で、「この仕事を3年経験したらつぎはこの部署に行ってもらおうかな」というように人材を軸に仕事が割り振られていきます。
あるいは、「これまでは日本国内向けに販売していたけど、Aさんは中国語が堪能だから中国向けの販路開拓を任せてみよう」といったようにその人材のスキルや適正をもとに新たな仕事が生まれることだってあります。
一方、ジョブ型の方では先に組織図やポジションから作ります。
中国市場を開拓するために海外営業部を作り、海外営業のメンバーとしては中国語が話せる営業経験者であることを必須条件としよう、というような感じです。
先に組織図を作り、そこに合う人をあてがうわけです。
ジョブ型の組織においてはそのジョブ(仕事)がなくなればそのジョブのために雇われている人は不要になるためリストラされることもあります。
例えば、自動車部品メーカーが新たに医療機器業界に参入しようとして外部から医療機器業界の経験者を採用したとします。
しかし、残念ながら事業がうまくいかず早期に撤退した場合、その外部から採用された医療機器業界経験者は仕事がなくなるためリストラされる可能性が高いわけです。
こうした状況を踏まえてジョブ型雇用のメリットとデメリットをいくつかご紹介していきます。
メリット
専門性を高めていきやすい
ジョブ型雇用のメリットの一つが専門性を高めやすいこと。
ジョブローテーションでいろんな部署を転々としていく場合、社内の人脈を広げたり広く浅く経験を積む分には良いのですが、特定の仕事の専門性を高めにくいという特徴があります。
ジョブ型の場合には一つの業務を極めていくことになりますので、その分だけじっくりとその仕事の専門性を高めていくことができます。
職種によっては稼ぎやすい
ジョブ型の場合、職種ごとに給与レンジも違うことがあります。
例えばAIのエンジニアなどの給料は営業事務の人の給料と比べると格段に高いといった具合です。
年功序列で職種に関わらず年齢や職位によって年収が決まる従来の伝統的な給与制度と違い、仕事に対して報酬が設定されるため、職種によっては従来型の組織よりも稼ぎやすいということが言えます。
転職しやすい
ジョブ型の会社で経験を積むと、同じくジョブ型の会社へは転職がしやすくなります。
これは特定の職種での専門性を高めることができるという点が大きいです。
例えば、営業職として転職活動をすることを想定してみましょう。
従来の組織で「営業3年⇨人事3年⇨調達3年」と経験した人材の場合、社会人経験9年に対して営業経験は3年しかありません。
一方、ジョブ型の場合には「営業9年」となりますので、同じ年齢ならばより経験豊富な人材の方が転職市場では有利になります。
ただ、当然実績にもよりますし、ベンチャーのように1人で複数のポジションを兼務する必要がある場合には広い経験を積んでいることが評価されるケースもあります。
デメリット
他の職種を経験することができない
ジョブ型組織のデメリットは他の職種が経験しづらいということでしょうか。
新卒で入社する場合、なかなかどんな仕事が自分に合っているかなんて分かりません。
最初に配属された仕事以外の仕事に携わるチャンスがないことで、本来もっと自分に合った仕事があったとしてもそれが分からないというデメリットがあります。
20代のうちならポテンシャルを見て採用してくれる企業はありますので、ジョブ型の会社で働いている人で他の職種にキャリアチェンジしてみたい人は転職してみるのもありです。
職種によっては稼ぎにくい
ジョブ型は職種によって待遇にも違いがある場合があり、自分の仕事に対する報酬が安い場合にはデメリットとなるでしょう。
例えば、従来型の大手日系企業であれば総務という仕事と営業という仕事で年収に差はありません。
しかし、これがもしジョブ型の会社であれば利益に直結する営業の方が年収が高く設定され、総務など事務方のポジションは年収が低く据え置かれてしまうことが多いです。
リストラされやすい
ジョブ型の組織ではリストラが行われやすいという特徴もあります。
例えば、人事として働いていたとして、人事機能を海外に移管するとなった場合、日本には人事が不要になりますのでリストラされるか、海外転勤をする必要が出てきます。
外資系の場合には「ポジションクローズ」と呼ばれ、自分の業務がなくなってリストラ対象になることは珍しくありません。
日系企業でもジョブ型を進めようとしている企業ではリストラが行われる可能性はあると思います。
まとめ
ジョブ型雇用にはメリットもあればデメリットもあります。
自分がどんなキャリアを築いていきたいのかをしっかりと考え、それに見合った会社やポジションに転職するのが良いでしょう。