・転職エージェントには両面型と分業型とがあると聞いたけど何が違うの?
・両面型と分業型のメリットやデメリットを比較したい!
実際に転職エージェントで勤務している筆者が、こんな疑問を解決していきます!
ざっくり本記事の内容をまとめると以下のような感じになります。
・両面型と分業型とは転職エージェントのサポート体制の呼称
・両面は情報の深さに強みがある
・分業は求人数に強みがある
それぞれ具体的に説明していきますね。
両面型と分業型とはサポート体制の違い
転職エージェントは両面型と分業型とに分けることができますが、それは求人企業と転職希望者をどのようにサポートしているかの違いです。
・企業と転職希望者のどちらも一人のコンサルタントが担当するのが両面型
・企業担当と人材担当を分けているのが分業型
基本的に大手になるほど分業型であることが多く、小規模になるほど両面型の比率が高くなります。
また、若手に強いエージェントほど分業型の比率が高く、ハイクラスな人材を扱うエージェントほど両面型の比率が高くなります。
その理由は後ほど解説します。
メリットとデメリットの比較表
両面、分業それぞれの体制で一般的に言われているメリットやデメリットは以下のようなものがあります。
メリット | デメリット |
求人内容や企業について詳しい | 転職希望者より企業の利益優先 |
合格率が高い | 窓口が増える |
長く付き合える | 求人数が少ない |
続いて、両面型のメリットデメリットの裏返しになりますが、分業型については以下のような特徴があります。
メリット | デメリット |
転職希望者に寄り添ってくれる | 求人についてあまり知らない |
窓口を一本化できる | 紹介される求人のマッチ度が低い |
求人数が多い | 長い付き合いには向かない |
順番に説明していきますね。
両面型と分業型とで異なる点
メリットとデメリットで取り上げた項目について解説していきます。
候補者の立場に寄り添ってくれるかどうか
これはそもそも転職エージェントのビジネスモデルの問題なので仕方ないのですが、基本的に転職エージェントのコンサルタントは企業よりの立場です。
なぜならあくまで収益は企業から得ており、逆に転職希望者は最初から最後までお金をもらうことはありません。
失礼な言い方をすれば、転職エージェントにとっては企業がお客様で転職希望者は商品な訳です。
まあ、無料で使えるサービスなのはありがたいですけどね。
そうした事情から、転職エージェントは「仕事に悩む人を助けたい!」ではなく「人材採用に困っている企業を助けたい!」というスタンスになる傾向が強いです。
両面型の場合はまさにそれで、「その人に合った求人はなんだろう?」というより「クライアント企業から依頼された求人に合う人ってどんな人だろう?」と常に考えて仕事をしているわけです。
時には求人の依頼をされていなくても、「この人がこの会社に入ったらきっと事業が伸びる!」と考えれば企業に人材を提案することもあります。
当然企業と候補者双方の同意を得た上で行います。
一方、これが分業型の場合には企業ではなく個人に寄り添ったサービスが提供できるとされています。
その理由は転職希望者専任の担当者がついてくれる体制だからです。
分業の場合には企業とやり取りする担当者と転職希望者とやり取りする担当者を分けています。
企業の担当者は当然企業側のために仕事をしますが、個人担当のコンサルタントはキャリアアドバイザー(CA)と呼ばれ、個人に寄り添ったサービスが可能というメリットがあります。
CAは特定の企業をクライアントに持っているわけではないので、転職希望者にあった求人を客観的な視点からオススメすることができます。
連絡の煩雑さ
連絡が煩雑になりがちなのも両面型の特徴です。
分業型の場合には担当のキャリアアドバイザーからしか基本的に連絡が来ることはありませんので窓口は一人です。
逆にはずれのキャリアアドバイザーに当たってしまったら悲劇ですが、、
しかし、両面型の場合には自分に紹介できる求人を持っているコンサルタントからそれぞれ連絡が来ることになるので、窓口が複数になってしまうという特徴があります。
一つのエージェントしか使っていないのに覚え切れないほどのコンサルタントから連絡が来る場合もあります。
紹介される求人数
紹介される求人数にも差が出てきます。
正確に言うと分業と両面の違いというよりは大手と中小エージェントの違いと言った方が適切かもしれません。
ただ、基本的に大手のほとんどが分業であり、中小で分業体制をとっているところはほとんどないので、一応両面と分業の違いとして説明させていただきますね。
大手に分類されるのは、リクルートエージェント、doda、パソナキャリア、ジェイエイシーリクルートメント、マイナビエージェント、アデコあたり。
この中で分業型じゃないのはジェイエイシーくらいかと思います。(他の大手でも両面の部隊を持っているところもあります。)
両面型の場合、そこで働くコンサルタントは企業と個人の両方をサポートしなければなりません。
となると、コンサルタントが担当できる企業数はかなり少なくなってしまいます。
一方、分業型の場合には企業側のサポートに専念しているコンサルタントがいるので、一人当たりが担当できる企業数は多くなります。
両面型できちんと企業をフォローしようと思うと、担当できる企業数は5社〜20社程度が限界です。
一方、分業型のエージェントだと60社〜100社以上も担当したりします。
転職エージェントからみた分業制のメリットはこうした業務効率を高められる点にあります。
より多くの求人を獲得し、より多くの転職希望者をサポートすることで、全体の売り上げを伸ばそうとするわけです。
紹介される求人数を増やしたいとお考えの方は以下の記事も参考にしてみてください。


紹介される求人のマッチング精度
紹介される求人のマッチ度は両面型に分があります。
分業型は先ほど書いたように、求人数が多いという特徴があります。
その結果、分業型のエージェントはとにかくたくさんの求人を紹介することでたくさん応募してもらい、その中からどこかで決まればいいかな、というスタンスです。
なので面談の時に希望を伝えても、そこから外れた求人を紹介されることも多くなってしまうのです。
例えば経理の人に飲食店の店長の求人が紹介されるような雑な紹介が多くなります。
一方、両面型の場合にはクライアント企業の目線に立って人を探すので、的外れな人材を紹介しないよう、比較的慎重に求人を紹介する人材を選定します。
その結果、個人にとっても自分の経歴や希望に合った求人を紹介してもらえる可能性が高いんです。
逆に言えば、自分の経歴をしっかり見て応募要件を満たしているかどうかをシビアに判断されるので、いくら自分が応募したいと思っている企業があっても、要件を満たしていなければ紹介してもらえません。
求人の企業や業務内容についての詳しさ
紹介される求人についてどれくらい深く情報を持っているのかについても体制の違いが出ます。
分業の場合には窓口となるキャリアアドバイザーは求人の内容や企業についてあまり深くまで知りません。
なぜなら実際に企業から話を聞いていないからです。
大量に採用している企業はエージェントまで出向いてCA向けの説明会を開いたりもしますがごく一部だけです。
一方、両面型の場合には企業の採用担当者や経営者と直接コミュニケーションをとり情報を集めることができ、分業型に比べてはるかに濃い情報をもらえることが多いです。
求人票に載せられない情報も多いので、正直言って求人票みるよりも直接話を聞いた方が良いです。
例えば、「今の部長が使えないので降格させて後任を採用したい」みたいな理由で募集するケースもありますが、そんなこと求人票に書いたらえらいことになります。
長期的なパートナーになってもらえるか
転職は一生のうちに1回だけなんてルールはありません。
2回3回と将来的に複数回の転職を経験することもあるでしょう。
そんな時には両面型の方が長期的に付き合える関係性になれることが多いです。
信頼できるコンサルタントを見つけることができれば一生の付き合いになると思います。
その人の担当企業で求人があるかどうかは別としてキャリアの相談に乗ってもらえるはずですよ。
分業型のキャリアアドバイザーは割と短期間で他の職種に転職して行ってしまうことが多く、「前回お世話になった●●さんにまたお願いしたい」と思っても難しいことも多いです。
しかし、両面型の場合には別の転職エージェントに転職している可能性はあるものの、個人的に仲良くなっておけばずっと頼りになるエージェントとして付き合いを続けていけることがあります。
本格的に転職活動をするかどうか悩んでいるときでも「最近転職市場ってどうなの?」と気軽に深い情報を聞ける相手がいるとキャリアアップのタイミングを逃さずにすみますよね。
残念な実態も
先ほどご紹介したのはあくまでも構造的にそうなりがちという話です。
しかし、そうした理論上の話と実態とは大きくかけ離れていることもありますのでその辺りについてご説明していきますね。
同業者としてお恥ずかしい話ですが、、
おそらく転職市場のバブルがはじけたら低レベルなコンサルタントは食べていけなくなり、人材市場から一掃されると思うので暫しお待ちください。
企業のことを深く知らない両面型コンサルタント
本来は両面型の最大のメリットと言っても良い「求人に詳しい」という点が実現できていないコンサルタントがとても多いです。
転職エージェントは採用市場がバブルだった2015年ごろから2019年までの間に若手の未経験者を大量にコンサルタントとして採用しています。
その結果、教育も追いつかず質の悪いコンサルタントが業界全体に溢れ返る事態となったのです。
質の悪いコンサルタントがたくさんいるため、両面型にもかかわらずクライアント企業のことやそこから出ている求人についての知識が全然ないという残念なケースが非常に多くあります。
そして、そんなコンサルタント経由では言わずもがな合格率も低く、これでは両面型の転職エージェントを利用するメリットが得られませんね。
転職希望者への介在価値を発揮できていないキャリアコンサルタント(分業型)
これも両面型の方と同じ原因からですが、分業型という体制のメリットを十分に発揮できているエージェントやコンサルタントは決して多くありません。
分業型は特定の求人をゴリ押しすることなく客観的な立場でその個人のキャリアにとって最も良いアドバイスを行える点に体制上のメリットがあるはずでが、実態はかけ離れています。
そもそもキャリアアドバイザーというポジション名でありながらキャリアについてアドバイスするスキルや意欲を持っていない人が大半で、ほとんどの場合は自動求人紹介マシーンと化しています。
当然質の高い人もいるのですが、採用市場にとって好景気が続いたせいで良い人に巡り合える可能性が低くなっているのが現状ですね。
まとめ:分業と両面の特性の違いを活かした転職活動をしよう
分業型と両面型はどちらが良いというものでもありません。
今回ご紹介したメリットとデメリット、そして実態を認識した上で自分の希望に合ったエージェントを選ぶようにしましょう。

